我が国の伝統的建造物群保存地区を代表する町の一つが、私の住む埼玉県の川越市だ。江戸時代から何度もの大火災に見舞われ、たどり着いた蔵造りの街並みは明治時代にできあがった。当時、江戸の本家東京では耐火性の高い建物ということでレンガ造りも建てられていたが、川越ではあえて土蔵造りとし、江戸の風情を残す蔵造りの町が出来上がった。現在、蔵造りの町 小江戸川越には、年間400万人以上の観光客が訪れている。
蔵造りの町川越も、かつての賑わいをずっと維持してきたわけではない。全国的に他でも多くみられるように、鉄道の発達とともに市街地の中心が駅周辺へと移って行った。川越でも1960年代には商業の中心が蔵の町より川越駅周辺へと移っていき、人通りも少なくなり寂れていったという。
時代は高度成長期で、駅前には近代的で明るい店舗が建ち、蔵造りの町は忘れ去られた。
<つづく>