娘の高校では夏休みの課題「総合学習」において、職業研修ということで自分の希望する分野の仕事をしている人にインタビューをする、といった体験学習が行われている。
その仕事をしている人が、実際にどんな進路を経てその職業に就いたのか、実際に仕事についてからの苦労ややりがいは、現在はどんな問題や感想を持っているのか、といった生の声を直接取材することによって、今後の進路の方向や学習方法に参考にするためだ。
娘はアニメのキャラクターやイラストを描くことが好きで、将来そういった方向の職業の参考にと
漫画家の垣野内成美先生にインタビューをお願いした。
垣野内先生ほどの有名な漫画家の先生に娘の依頼に答えて頂けるかということが、少し心配だったが、有難いことに快くお引き受け頂けた。
それには、学校の方も少し驚いたようだったとのこと。
アニメ・薬師寺涼子の怪奇事件簿
(原作 田中芳樹)
垣野内先生は、かなり特殊な経歴をお持ちの方だ。高校を卒業してアニメの専門学校に入学するも、直ぐに東京の作画スタジオに上京就職(大阪出身)をしてしまい、専門学校で勉強しているよりも職場で実際の仕事として覚えていく道を選んだという。
つまり、専門学校へも行かず、美術系の大学へも行かず、職人の道に多いように高校を卒業してすぐに就職して仕事をしながら技術を身につける道を選んだことになる。大工さんや鮨職人には当然それまでに経験や才能が有るとか無いとかは割りと無関係に、職場に入り実際の仕事をしながら技術を覚えていくというのが当たり前になっているが、アニメや漫画の世界は、専門学校や美術系の大学で基礎的なことは学んでからの方が良いのではと思ったが、実際は才能があれば学校に行かなくも漫画家としてデビューできてしまう世界なのかも知れない。
アニメスタジオの場合などはある程度絵の才能がなければ雇ってもらえないだろうと思うので、垣野内先生は自分では謙遜していたが、高校時代にそれなりの才能がお有りだったのだろうと思う。
それにしても、高校を卒業して、大阪から東京のスタジオへ飛び込むくらいだから、かなりの「やる気と勇気と信念」がなくてはできないことだと思う。
吸血姫 美夕 シリーズ
昨今、漫画家志望の若者が多い中、垣野内先生の様な経歴で成功された方の例はほんの一握り、否他にほとんど聞かないことだと思う。もちろん成功されている方たちは、一般の凡人とは違うので、それぞれ驚きの人生を歩んでこられた方が多いのかも知れないが。
小説家と同じように、漫画家等も自分の作品を出版社に持ち込んでデビューできるような才能のある人は別として。直接デビューできるほど才能はないが、その世界のことが好きなのでそうした仕事に就きたいと思っている一般の人はどうしたらいいのだろうか。
昔は漫画家。そしてそのころからの漫画家予備軍のアシスタント。今は更にその周辺職業に、紙媒体の漫画から、動画・アニメーションへと広がり、その関係でアニメーター、キャラクターデザイナー、作画監督、アニメ監督等々、制作方法もアナログからデジタルに、二次元表現から三次元表現(3D)になるなど、必要な技術も時代とともに変わってくる。
とはいえ、必ず必要なのはセンス・感性であることには変わりはないと思う。
垣野内先生の場合は、アニメーターからキャラクターデザイナー、そして漫画家、更に今ではイラストレーター、監督としても活躍されている。
高校生がこれからこうした分野の職業を目指す時、進路としてはどう考えたらいいのか。
垣野内先生曰く、先生自身が今になって思うこと、もっと色んなことを勉強しておけば良かった。何しろその時にやるべきことをしっかりとやっておくこと。それは必ず後になって役に立つと思う。
垣野内先生が現在少し残念に思っていることは、大学生活を送った経験のないことだそうだ。当時大学に通っていた友人の大学に連れて行ってもらったことはあるとのことだったが、キャンパスライフを送ったことがないので、それが残念とのことだった。
垣野内先生の経験からの言葉によると、やろうと思ったことを実現させようとする「やる気と努力」。そして、へこたれない心とやり遂げる力が大切とのことだった。
今回、お忙しい中親切に対応頂いた垣野内成美先生には心よりお礼申し上げます。
娘にとってあこがれの垣野内先生にお会いでき、直接お話をうかがうことができたことは、心に残る経験っとなったことと思います。
並びに、大変お世話になったアートコレクションハウス株式会社のM氏にも心よりお礼申し上げます。
桜の樹の下で/上部分 (2007年 リトグラフ)